2015年2月21日土曜日

ハイローフランジは左右バランス是正に効果はあるのか?

どうも、YMDです☆
今日は前回の記事に引き続き、ホイールについて書きたいと思います。

前回でも書いたホイール後輪の左右スポークバランスですが、
完組でも手組でもハブのフランジをハイロー(駆動側が大きく非駆動側が小さい)形状にして、
なんとか左右バランスを少しでも是正しようという意図が見えます。
そこで、ハイローフランジがどれぐらい是正に効果があるのか、
スポーク角度という観点から確認してみたいと思います。

まずは手組ホイールで一般的に使われているTNIのエボライトハブで見てみましょう。
またCADで線を引いてみました。
ちなみに、リムはENVE1.45として寸法を置いてあります。


TNIのエボライトハブは、駆動側がφ49mm、非駆動側がφ41mmの
少しだけハイローとなっているハブですが、
この場合で、駆動側のスポーク角度が3.63度、非駆動側が8.04度となります。
フランジの幅方向の距離が、
リムセンターに対して駆動側が16.35mm、非駆動側が36.93mmとなっており、
倍以上の差があるので、
この程度のハイロー具合だとスポーク角度も倍以上の差のままとなります。

ちょっとこれだけだとハイローフランジの検証になりませんね。
では、もっと極端なハイローフランジハブで見てみましょう!
そんなハブがあるのかなぁと思ってましたが、ありました(笑)
初めて見た時、ちょっと笑いかけましたが、作ろうという人はいるものですね☆

BARTIME RS100
http://www.bartimecycling.com/product-Hubs-RS100.php

このハブ、駆動側のフランジ径がφ90mm!!
実にTNIのハブの倍近い寸法です。
非駆動側はφ37mmとなっていて、かなりのハイローとなっています。
では、同じくCADで線を引いて確認してみましょう。


はい。
あれ、こんな程度なのか・・・
駆動側の角度が3.93度、非駆動側が7.67度。
駆動側のフランジ径がほぼ倍で、フランジ幅方向の寸法もほとんど同じなのに、
角度は0.3度しか改善されませんでした。

では、ハイローではないハブでも一応見てみましょう。
今回、実際に組むのに使ったSUZUEのクラシックハイフランジハブです。


このハブはフランジ径が両側φ67mmで、
フランジ幅方向の寸法も駆動側が16.95mm、非駆動側が39.95mmと、
上記2つのハブより広い寸法となっています。
角度は、駆動側3.9度、非駆動側9.13度となりました。
駆動側はRS100ハブと同じぐらい、
非駆動側は上記2つより頭ひとつ角度がついてますね。

では、ここで少し実験をしてみます。
エボライトハブの寸法を変えてみたら、どのようにスポーク角度が変わるでしょうか?

まずはフランジの位置関係はそのままに、
駆動側のフランジ径を10mm大きくしてみましょう。


駆動側のスポーク角度は3.7度になりました。
もとが3.63度なので、フランジ径10mm(半径は5mm)あたりの改善は約0.07度となりますね。

ではフランジの幅方向をいじればどうなるでしょうか?
駆動側のフランジを1mm外に移動させてみます。


こちらは駆動側のスポーク角度が3.85度となりました。
幅方向については、1mmあたり約0.22度の改善となります。


以上のことより、ここでは下のように結論をまとめたいと思います。

ハイローフランジに効果がないことはないが、
その効果は幅方向の寸法に比べてかなり小さくなる。

要するに、フランジ径の差を10mm大きくするより、
フランジの幅方向の差を0.5mm小さくする方が効果は大きいということですね。

もちろん、11速化によって駆動側のフランジはすごく狭苦しい思いをしているので、
現実には駆動側フランジの幅方向の位置をそんなに簡単に動かせません。
かといって非駆動側フランジの幅方向寸法を狭くすると
全体としてのスポーク角度が小さくなり、ホイールの横方向の剛性が弱くなってしまいます。
(それは分かっててこんなこと書いてます笑)

多段ギヤが付いている駆動側のスポーク角度は出来るだけつけたい、
ホイール全体としての剛性も確保したい、
でも左右バランスはある程度保ちたい・・・
ハイローフランジはそんな中での苦肉の策と言えそうですね。

個人的に2:1組が最も良いだろうと思うのは、
このようにハイローフランジのハブでもほとんど解消できないぐらいの角度差があるからです。
それならスポークの本数そのものも左右で差をつけるのが合理的だと思えます。

偉そうに書いてますが、あくまで設計的な観点からこのように書きました。
実際に手組を行っている方の中には、
ハイローフランジは効果があると書いている方もいらっしゃるので、
ハイローによる少しの違いが、実際のホイール組には大きいのかもしれませんね。
理論は大事ですが、頭でっかちになるのではなく、
現場の声も大切にする設計者でいたいと思います。

1 件のコメント:

  1. 手組みに興味津々の通りすがり2015年12月24日 18:38

    タンジェント組みする場合、スポークはフランジの頂点からリムに向かっている
    訳ではありません。
    だからこの検証は正しくないと言えます。
    言い換えればこの検証は「左右ラジアル組みの場合はこうなる」となります。

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