2015年2月20日金曜日

スポークの組み方及びハブフランジ径による駆動効率の違い

どうも、YMDです☆

昨日の記事はスマホから勢いで書いて、
ちょっと肝心な部分を書き忘れてたのでもう少し追加します。

リヤについては考える要素がフロントより多いと書きましたが、
それは駆動が関わってくるからです。

・駆動が必要になる
・そのための駆動ギヤがあることによってスポークの角度が左右で異なる

ざっくりと挙げて、大きくはこの2つの要素によって影響が出ます。

左右のスポーク角の違いによるアンバランスの是正は、
昨日の記事のように2:1組や左右でスポークの太さを変える、
左右で組み方を変える等によって行われています。
個人的には、角度自体が倍ほども違うので、
スポークの本数自体をそれに応じて変える2:1組が最も良さそうと考えています。

さて、もう一つの要素の駆動を伝えないといけないという点ですが、
ENVEで組んだホイールはリヤのスポークを

ドライブ側:3クロス組
反ドライブ側:1クロス組

としました。
この理由について説明します。

特殊なホイールを除いて、自転車のホイールはスポークにテンションが与えられて、
そのテンションでリムを回して駆動力を伝達するという構造になっています。
スポークを引っ張るのはハブのフランジであり、
ハブのフランジがスポークを一番強く引っ張れるのは、
スポークがハブフランジの径に対して接線方向になっている時になります。
つまり、スポークの角度を接線方向に出来るだけ近付けるのが
駆動伝達効率に対しては良いということになります。

今回組んだホイールのスポークパターンをCADで図にしてみました。
まずドライブ側の図です。

実際のハブやリムの寸法を入れて角度を測ってみると、
今回の組み方ではスポーク角度は約78度となりました。
(ラジアル組が0度、完全接線方向が90度とした場合です)
かなり接線方向に近いのが分かると思います。

続いて、反ドライブ側の図です。

今回、反ドライブ側はラジアル組ではなく、1クロス組にしました。
その理由は、ひとえに出来るだけ駆動伝達効率を上げたかったからです。
反ドライブ側は8本しかスポークがないので、
現実的な範囲で組むことが出来る1クロス組にしました。

ラジアル組の場合、ハブがスポークに与える力をベクトル分解しても、
駆動を伝達する方向への力は理論上は0になります。
(スポークテンション等の要素があるので、現実には完全に0にはなりませんが)
駆動を担う後輪でそんなラジアル組を採用するハッキリとした理由が見つけられなかったので、
後輪にラジアル組を入れる考えはありませんでした。

今回の場合、スポークを引っ張る力をベクトル分解してリムを回す方向の力の大きさを見ると、
反ドライブ側はドライブ側の約62%のリムを回転させる力を発生することになります。
(スポーク1本あたりでの比較、ハブの接線方向に働く力が同じになるとして)
ちなみに、スポークの角度は約50度になります。

以上のことが、今回のホイールで2:1組の3クロス&1クロス組を採用した理由です。

なお、ハブのフランジ径も駆動伝達効率に大きく影響があるのでは?
と考えて、今どき希少なハイフランジのハブを採用したのですが、
こちらについては考えてた理論に間違いがありました。

間違いの元となった手書き図

この図に書いてあるとおり、
ハブフランジがスポークを引っ張る力を一定として考えると、
スポークがリムを回そうとする力はハブフランジの径に完全に比例します。
要はフランジ径が大きいほど駆動伝達力が優れることになります。
この図でφ40だと8kg、φ65だと13kgと書いてあるのがそのことになります。

しかしながら、ホイールが完成して実走も済ませた後、
本当にそんなに美味しい話があるんだろうかと疑いの目が出てきました。
ホイール自体の性能に文句はなかったので、
それを理論的に実証しようとして逆に理論の間違いに気付きました。

この理論でいくと、駆動伝達効率が最高になるのはディスクホイールになります。
それもスポークホイールと比較した場合に桁違いの差が発生することになります。
ディスクホイールが駆動効率に優れていることは事実ですが、
この理論が合っているのなら、
ディスクホイールにするだけで10倍ほども伝達効率が上がることになります。

そこでふと気付きました。
自転車にホイールを付けて走る場合、
ホイールを回すのはギヤを介してハブの軸を回して、その力が伝わって、となります。
前提条件として一定にしなければならないのは、ハブ軸に働くトルクなのでした。
トルクが一定の場合、ハブフランジがスポークを引っ張る力は、

スポークを引っ張る力=トルク÷ハブフランジ径

となり、ハブフランジ径が大きくなるほどスポークを引っ張る力が小さくなります。
結果として、ハブフランジ径が大きかろうが小さかろうが、
スポークがリムを回そうとする力はほとんど差が出ないということになります。
改めて考えるとかなり間の抜けた話です。
美味しい話には気を付けろということですね(笑)


今回はかなり理屈っぽい話を長々と書いてしまいました。
出来るだけ普通の人にも分かるような書き方を心がけましたが、
いかがだったでしょうか?
僕も設計者として、こんな間違いをしないようにもっと精進していきたいと思います。

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